◼︎ コトノハ ◼︎

本と芝居とラジオの日々 / all rights reserved

『腑抜けども、悲しみの愛を見せろ』本谷有希子

劇団、本谷有希子主宰の本谷有希子のデビュー作。非日常的でナンセンスで劇的で、そんな指向の強い現代小劇場において、物語で勝負する本格派の劇作家・演出家。その彼女が「原点」と呼ぶ作品がこれ。悲しくも愛おしい人間という存在を直視した作品、と言えばいいのだろうか。

 読み出して最初の2ページ目でまずショック、そしてまもなくまたショック。その衝撃を一言で言えば「お前、小説を馬鹿にするな!」

  「手動でしかチャンネルを変えられない四本脚テレビにしろ、白いひっかき傷にまみれたちゃぶ台にしろ、桐ダンスの上に飾られた日本人形にしろじっと沈黙を守り、ここが田舎であるという力強い主張に徹していた。」

 こんな「描写風のもの」が延々と続くのだ。「なんなんだこれは!小説は、下手なト書きや演出じゃないんだぞ」と怒りが込み上げ、正直、読むのが辛くなった。語りすぎて失敗している小説というのはこれまでも多くあったが、これは語りすぎというレベルをはるかに超え、いらないものを強制しすぎだ。語らなくても、にじみ出る。読むうちに、頭の中で登場人物が勝手に像を結び、生き生きと動き出す、そういう小説が本来もつ可能性を全て台なしにしているようで参った。

 いや、もしかしたら新しい小説の試みとして意識的に行ったのかもしれない・・・。念のため、そう思おうとしたが、もしそうだとしても、やはり明らかに失敗だ。ト書きや演出が、稚拙すぎる。強制してくる演出がよければ、百歩譲って読めるのだが、残念ながらそれがヘボ・・・。これでは辛い。

 なら読むなと、本谷ファンの声が聞こえそうになったとき、ふと私はひらめいた。

 「それならト書きと下手な演出を飛ばして読めばいい」

 というわけでせりふを読み飛ばしていたら、登場人物が動き始め、なんとか最後まで読めた。そこで感想「プロットはよかったよ」