◼︎ コトノハ ◼︎

本と芝居とラジオの日々 / all rights reserved

『テロリストのパラソル』藤原伊織

 「殺むるときもかくなすらむかテロリスト蒼きパラソルくるくる回すよ」

 乱歩賞&直木賞W受賞の名作。スピード感もあり、あっという間に読めるおすすめの一冊。

 島村は、20年以上もアル中となり、過去を隠し暮らしていた。その日も、いつもの晴れの日のように、公園で昼寝しながらウイスキーの口開けを楽しみ、手の震えが止まってから働くという、いつもと同じ一日となるはずだった。しかしその平穏は、1発の爆弾によって崩された。

 爆弾で動き出したのは、隠していた20年前の過去。学生運動全共闘時代のあの日のことだった…

 かつての仲間、死んでしまった恋人、そしてその娘や怪しげなヤクザたち。流れるように展開する物語は読みやすく楽しめる。特に文は素晴らしく、冒頭は美しい。さすがは乱歩賞&直木賞受賞作。

 ただ、ミステリーとしてのテクニック、あるいは文学としての思索は、やや薄い印象。少なくともあの時代を描いた作品なら、もっと「哲学」が欲しかった。