◼︎ コトノハ ◼︎

本と芝居とラジオの日々 / all rights reserved

『対岸の彼女』角田光代

中学生以上の女性にぜひ読んで欲しい一作。できればその後30を過ぎて、もう一度読み返して欲しい作品。

 「おとなになったら、友達を作るのは途端に難しくなる。(…)高校生のころはかんたんだった。(…)けれど私は思うのだ。あのころのような、全身で信じられる女友達を必要なのは、大人になった今なのに、と」

 角田光代が腰巻に書くように、「友」が大きなテーマになっている。

 上手に公園デビューできない母親、小夜子が、思い切って仕事を始めるところからこの物語は始まる。その仕事先の女性社長が抱える闇と、彼女が抱える闇と。それは、彼女達が高校生だった頃のある事件を通して、深く結びついていた。

 「手をつなぎ屋上から飛び降りた二人の女子高生が、なぜそれきり会わなかったのか小夜子はふいに理解する。連絡しなかったのではない、子どもだからすぐに忘れてしまったのではない。葵ももうひとりの女の子も、こわかったのだ。同じものを見ていたはずの相手が、違う場所にいると知ることが」

 二人の間に横たわる、幅広く深い川。その大きさに、人は時々とまどい、乗り越えることをあきらめる。しかしその川って何なのだろう。役職、職場、立場、家柄…。全てが違っても、大切な何かがつながっていれば、対岸の彼女ともやっていける。

 一人で疲れた時、友達が欲しい時、昔の友達が懐かしい時、そんな時に読み返してみてください。