◼︎ コトノハ ◼︎

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島本理生「生まれる森」

「そばにいると苦しくてたまらないのに、離れようとすると大事なものを置き去りにしているような気持ちになった」

「気がつくと一緒に深い森の中に戻っている、抜け出す努力を放棄したまま大人になってしまったこの人と十年も二十年も一緒にいるなんて冗談じゃないと、そんなふうにどこかで思っていた」


ずいぶん前に買った切りになっていたのを、ようやく引っ張り出して読んだ。きっと気に入るはずだと思っていたが、やっぱりよかった。


まず、上手い。そして空気がいい。何か、少し、力をもらえる気がする。多分、これが書かれた頃は特に。


ただ、同時に、ひっかかるものも残る。恐らくそれが、芥川賞をとれなかった理由なのだと思う。(同期の受賞作は読んでいないのだが)


そして同時に思うのは、それでも、この、王道を行く作家に、芥川賞をとらせてあげたい、ということ。